【書評】最新刊『ルトワックの日本改造論』を読む。国防以上に大切な日本の課題、「少子化」について考える。

f:id:NextCaesar:20191213181018j:plain

こんにちはCJです。

世界的に有名な戦略論の大家であるルトワックの最新刊が発売されていたので、早速購入しました。

 

まさに題名の通り、「日本をいかに改造するか」について様々な提言が述べられています。中国、韓国、北朝鮮とどう向かい合うのか、という日本の国防のあり方についての提言がメインの内容になっており、非常に面白いです。

国防以上に重要な「少子化対策

しかし、この本の中においてルトワックが国防以上に重要視しており、かつ個人的にも非常に刺激的だったのが少子化対策についてです。

ルトワックは以下のように指摘しています。

日本人たちにとって最も重要なものは、その数を増やさなければならないということだ。とりわけ多くの老人たちを支える人間の数が少ないのは致命的だ。(プロローグ「日本人の読者のために」)

日本は国家戦略として「若返り」を目指すべきである。それはなぜかといえば、それが実現してから、ようやく戦略、外交、そして戦争について語ることができるからだ。(同上)

日本を含めアメリカやイギリス、ドイツなどの先進国の共通の課題は少子化です。

国家を支える次世代の人間の数が増えない。特に日本や韓国においては少子高齢化が急速に進んでいます。

人口減少のトレンドは、厚労省が発表している人口動態統計にもはっきり表れています。(2018年の出生数は1899年の調査開始以来最低の約91万人、合計特殊出生率は1.42で3年連続減少

ちなみに、合計特殊出生率とは、「一人の女性(15~49歳)が生む子供の平均数」です。

これはゆゆしき問題です。日本という国が急速に年を取っていることがわかります。

なぜ人口減少がネガティブなのかと言えば、長期的に見て、基本的な国力、特に国の経済力と関係しているからだと個人的に考えています。

少子化とは、将来の働き手、消費者が減少することなので、経済成長率の低下、税収減、年金制度の瓦解などにつながっていくことは容易に理解できます。さらに、経済力は国防の原資でもあるので、国防にも影響がでてくるでしょう。

日本にとっては大きな課題なのですが、日本政府が十分に手を打てているかと言えば、「否」としか言いようがありません。それは上記の統計を見ても明らかです。

ルトワックによる少子化解決のための2つの提言

ルトワックは本の中で、日本のアンチエイジング少子化の克服)のために、2つの解決策を冒頭の方で提言しています。

不妊治療の無料化

②5歳以下の子供の子育て(チャイルドケア)の無料化

 2つの項目について詳しい解説をルトワックはしていないので、そこは少し残念だったのですが、少子化対策に成功し出生率が上がっている国として、スウェーデン、フランス、イスラエルを挙げていました。

自分なりに調べてみると、日本とこれらの国とでは、たとえば不妊治療への助成」の1つをとっても、明確に内容が違うことがわかります。

日本体外受精のコスト:30~50万円(国や地域の助成制度があるが、手続きが面倒くさかったり、年齢制限、所得制限あり)

スウェーデン、フランス体外受精は保険適用。回数制限、年齢制限はあり。

イスラエル体外受精無料。回数制限なし。年齢制限あり。子供2人まで。

ざっくりいうとこんな感じで違います。特にイスラエルは人口増に積極的に取り組んでいることがわかります。これらの政策の結果、イスラエルでは女性一人につき平均で3.1人子供を産んでいるそうです。すごいですね。(ユダヤ人はただでさえ人口が少ないので、種を残すという意味でも子供は貴重なのでしょう)

ルトワックはこのように締めくくっています。

日本の愛国者は対中国戦略や対北朝鮮戦略の研究には熱心だが、少子化問題にも同じかそれ以上の危機感を持たないといけない。子供がいなければ、その国の未来はない。子供がいなければ、安全保障政策の議論など何の意味もないのだ。

ちなみに、ルトワックがこれほど少子化対策を強調するのは、彼自身が軍人時代にイスラエル側で中東戦争を戦った経験から来ている、と訳者の奥山真司氏は指摘しています。

当時のイスラエルは人口の面でアラブ諸国と比べて劣勢であり、ルトワックはそれによる不利をつくづく感じたそうです。

また、ルトワックは、少子化やメディアの発達といった理由によって、「人命尊重の時代が到来し、大国は、以前と違って、少数の戦死者さえも受容しなくなってきている。これは事実上の”戦争拒絶状態”である」と指摘しています。

この指摘から言えば、(一人っ子政策の弊害が出てきているとは言え)巨大な人口を擁している中国や、人権意識の低い北朝鮮は多少の国民の犠牲も厭わないので、戦争することに肯定的とは言わないまでも、そこまでの抵抗感は感じないだろうということは言えると思います。

そうした国々をお隣に抱えている日本にとっては、少子化対策は言わずもがな、国防についてもきちんと考えなければいけないと感じさせられました。